【Steam/iPadゲームレビュー】Papers, Please(ペーパーズプリーズ) - 責務と良心の間で揺れ動く心…!入国審査官となって人々の運命を決める傑作シミュレーション!
「Papers, Please(ペーパーズプリーズ)」は、PCゲームのプラットホームであるSteamにて配信されているゲーム。価格は980円。ジャンルとしてはパズルとかアドベンチャーになるのかな?
AppleStoreでも配信はしているが、対応しているのはiPadのみとなっているぞ。
PCのゲームは普段あまりやらないのだが、プレイ動画を見ていてめちゃくちゃ面白そうだったのですぐさま購入してしまったぜ。
ある日突然「アルストツカ」という国の入国審査官に選ばれたプレイヤーが、毎日途絶えることなく押し寄せる入国希望者たちを審査し捌いていくという珍しいタイプのゲーム。
ファミコン時代を思わせるようなグラフィックと作り込まれた時代設定が好奇心をくすぐるぜ。
ゲームの基本的なシステムは、入国に必要な書類を希望者から受け取り、書類に不備・不正がないかを確認して入国の可否を決定していくというもの。
例えば入国に必要な書類がパスポートと入国許可証だとしたら、希望者からその両方を受け取り、それらに記載されている有効期限や氏名が間違っていないかを念入りにチェック。
そして全ての情報が揃っていれば、晴れて入国許可の判を押して送り出すことができる。
しかし、もし有効期限が切れていたり、パスポートと入国許可証の氏名が違っていた場合は要注意。期限切れならまだしも氏名偽造なんて怪しすぎるぜ!
こんな怪しいやつらを我が国に入れるわけにはいかないので、入国拒否の判を3回くらい押して追い返してやろう。
必要な書類や手順などは逐一変わるが、このゲームの基本的な流れは以上だ。
…この説明でもわかる通り、正直なところかなり地味なゲームである。
それでもこのゲームに魅了されてしまうのは、入国審査官として仕事をしていく上で出会う個性豊かな入国希望者たちと、見え隠れする国家や組織の陰謀に胸が踊ってしまうからだろうな。
ゲームモードは入国審査官になってからの1ヶ月を過ごすストーリーモードと、ストーリーモードを一定の条件でクリアするとアンロックされるエンドレスモードの2つ。
エンドレスモードではいくつかある条件を選んでひたすらに入国審査の仕事に没頭することができる。スコアの要素もあるので、他プレイヤーとハイスコアを競うのも遊び方の一つだ。
メインとなるストーリーモードでは、新米入国審査官であるプレイヤーが様々な入国希望者と出会い、波乱の毎日を送る様子が描かれる。
毎日の業務は上記の通り書類を確認して判を押すだけなのだが、そんな繰り返しの毎日でも世界情勢は目まぐるしく変わっていくのだ。
例えば最初の方は入国の制限がゆるく、希望者は正規のパスポートを提示すれば入国することができる。
プレイヤーもこの時点では有効期限くらいしか確認するところがないので、慣れない業務でもあまり混乱することはないはずだ。
しかしここで事件が!
外国人の入国者によってテロが起きてしまったため、すべての外国人は新たに入国券の提示が必要になったのだ。
こうなるともちろんプレイヤーの仕事も増える。
今までの業務に加え、入国券の有無と期限にも気を配らねばならなくなるのだ!
という感じで、業務の内容は日々変化していく。
というかほぼ毎日のペースで新しい要素が追加されたり変更されたりしていくので、単純なはずの業務も飽きる暇なく続けていけるぜ。
そして最終的には1人入国させるのに何枚もの書類間で情報を確認しなければならないなんてことに…
そんなくるくると変わっていく入国制限に付随し、プレイヤーの城である検問所の性能もガンガン上がっていく。
はじめは本当にスタンプくらいしか無いような検問所だが、テロリストや密輸業者を取り締まるために検査機が導入されたり、国境を強行突破しようとする不届きもの対策で麻酔銃が実装されたりとどんどんできることが増えていくのだ。
もちろんそのおかげでプレイヤーの仕事もガンガン増えていくわけだが、それぞれの要素が追加されるタイミングがちょうどいいので無理なく理解していけるのがよくできていると思ったぜ。
そして忘れてはいけないのがこのゲームの醍醐味でもある個性豊かな入国希望者たちである!
まず始めにいっておくと、このゲームのキモは入国条件を満たしていなくても入国を許可することができるというシステムだ。
基本的にこのゲームは審査ミスによるゲームオーバーが存在せず、ミスをしても罰金が給料から差し引かれるだけである。
この給料というのは家族を養うために必要なもので、あまりに不足すると確かに不利ではあるのだが、それが必ずしもゲームオーバーに繋がるわけではないのだ。
つまり、最終的に入国希望者をどうするかは完全にプレイヤー次第ということである!
例えばこちらの男性は夫婦揃って他国から亡命をしてきた模様。
夫の方は特に問題がなかったので入国を許可すると、「すぐ後ろに妻が並んでいるから優しくしてやってくれ」とのこと。もうこの時点で嫌な予感がするが、とりあえず妻の書類を確認…
しかしやはり足りない!
ここで「これは規則だから」と彼女を追い返すのか、「こっそり通りなさい」と慈悲をかけるのか、プレイヤーは責務と良心の間で揺れ動くことになる。
入国を拒否すれば国からの評価は下がらずに済む…しかしそうすれば彼女は国に戻され命の保証はないという…まさに己の人間性が試される究極の選択こそがこのゲームの醍醐味なのだ!
彼らの他にも、もう息子と6年も会えていないという母親や、それとは逆にあいつは危険だから入れないでほしいという願いをしてくる者などバリエーション豊かな希望者たちがプレイヤーの選択を待っている。中には何やら怪しい組織の一員のような人物も…?
そんな彼らとどう付き合い、どんなエンディングを迎えるかは全てプレイヤーに委ねられている。
国家の犬として冷徹に業務を進めるか、怪しい組織に手を貸すかもあなた次第なのだ。
そしてもう一つ、俺がこのゲームで好きな点は「作業の面倒さ」である。
プレイヤーが書類を確認するためのカウンターはお世辞にも広いとは言い難く、たくさんある資料を少し広げようとしただけでもう画面はいっぱいいっぱい。
「あれ、あの紙はどこに置いたっけ」と資料の重なったカウンターを探したり、「あの情報はどこに載ってたかな…」と規則書をめくったりといちいち手間がかかるのだ。
何を言っているのかわからないと思うしここは本当に人によると思うのだが、俺はこの「マジで作業してる」感にとてもハマった。
このやりづらい環境でいかに効率的な仕事をするかという部分を突き詰める面白さもあるし、実際の主人公の気分になれるようなリアルさもあるしですごく好きなバランスだぜ。
スタンプを押すときのガチャコンという音や、書類を動かしたときのカサッという音、そしてプレイ中に流れるのは雑踏の環境音のみという潔さもこのゲームの雰囲気づくりに一役買っているな。
正直にいって、人を選ぶゲームであるのは間違いのない事実である。
派手なアクションもなければ可愛い女の子もいないし、やることといえば毎日変わり映えのしない画面を眺めて書類のミスをチェックするだけ…
それだけの地味なゲームなのだが、そこには確かに人間ドラマがあるし、自分が世界に関わっているんだという実感を得ることができる。
ゲームを進めれば、最初はあんなにもあたふたしていた自分の情報処理能力の向上に驚くことだろう。
万人に勧められるゲームではないが、こつこつと何かをするのが好きな人や、こういったシミュレーション系のゲームが好きな人には是非ともやってみてほしい作品だぜ。
世界観の作り込みや、秀逸なグラフィックなど、製作者の熱量が存分に感じられる一本になっているぞ。